マルジェラの本人期とは一体いつまでなのか、どのような特徴があり、どんな名作が生まれたのか気になっている方は多いのではないでしょうか。また、本人期のリングやアーティザナルライン、ここのえ期との関係、さらには内タグが本物かどうかの見分け方など、気になるポイントはさまざまです。
この記事では、マルジェラ本人期の定義や期間から始まり、代表的な名作やマルジェラコレクションの歴史、ここのえ期との違いまで詳しく解説します。あわせて、実際のアイテムを見分けるために役立つ内タグの情報や、人気のリングやアーティザナルの魅力にも触れていきます。
マルジェラ本人期について正確に知りたい方にとって、全体像をつかめるような内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
- マルジェラ本人期の期間と定義
- 本人期ならではのデザインや思想の特徴
- 名作アイテムや代表的なコレクションの内容
- 内タグやここのえ期との関係と見分け方
マルジェラ 本人期とは何かを徹底解説

- マルジェラの本人期はいつまで続いたのか
- マルジェラ本人期の特徴と思想
- マルジェラの本人期を象徴するタビブーツ
- 本人期のリングアイテムとは
- アーティザナルの魅力と代表作
- 本人期のアイテムが高騰する理由とは
マルジェラの本人期はいつまで続いたのか

マルジェラの「本人期」は、1989年春夏コレクションでのデビューから2009年春夏シーズンまでの約20年間を指します。これは創業者であるマルタン・マルジェラ自身がブランドのデザインに直接関与していた期間です。
この期間が特定される理由のひとつに、2008年を最後にマルタン本人が公の場から姿を消し、2009年春夏コレクションを最後にデザインからも退いたとされる事実があります。ただし、公式な声明は当時出されておらず、ファンや業界関係者の間では長らく憶測が飛び交っていました。
明確になったのは、2019年に公開されたドキュメンタリー映画『Martin Margiela: In His Own Words』にて、マルジェラ本人が引退を認めたことによります。これにより、2009年春夏をもって「本人期」が終わったことが事実として広まりました。
なお、2009年秋冬以降はデザインチーム体制を経て、2014年にはジョン・ガリアーノがクリエイティブディレクターに就任。ブランド名も「Maison Martin Margiela」から「Maison Margiela」に変更されています。これにより、本人期とそれ以降の時代の境界がより明確になりました。
マルジェラ本人期の特徴と思想

マルジェラ本人期の最大の特徴は、既存の価値観を覆す「脱構築(デコンストラクション)」の思想にあります。衣服を解体し、再構築することで、新たな美しさや意味を与えるというデザイン哲学が全体を貫いていました。
例えば、縫い目を表に出したり、服の裏側をあえて見せる「インサイドアウト」の技法が多用されました。これは「完成されたものが必ずしも正しいとは限らない」というメッセージでもあります。また、サイズを極端に拡大する「オーバーサイズ」や、古着を素材として再利用する「アーティザナル」など、実験的な要素が強いコレクションが多く見られました。
一方で、マルジェラはメディアに姿を見せず、匿名性を徹底するという姿勢でも知られていました。モデルの顔を隠したり、スタッフが白衣を着てショーを運営するなど、自己表現よりも作品自体に注目を集める工夫が随所に見られます。
このように、「本人期」のマルジェラは単なるファッションブランドではなく、現代アートの領域にも接近するような思想性の高さが際立っていました。そのため、今でもこの時代のアイテムは特別視され、コレクターズアイテムとしての価値も非常に高く評価されています。
マルジェラの本人期を象徴するタビブーツ

マルジェラ本人期を象徴する代表的なアイテムの一つが、1989年に発表された「タビブーツ」です。日本の地下足袋からインスピレーションを得てデザインされたこのブーツは、足袋のように親指と他の指が分かれた独特な形状をしています。
このデザインは、単なる奇抜さではなく、視覚的な違和感から「なぜ服はこの形なのか?」という問いを生み出すための装置でもあります。つまり、マルジェラの根底にある「問い直し」や「ズラし」の思想が、タビブーツという形で見事に表現されているのです。
当初はウィメンズ限定の展開でしたが、後にメンズラインでも発売され、ブランドのアイコンとして定着しました。また、ガリアーノ体制に移ってからもタビブーツは継続されており、現在ではスニーカーやパンプスなど多彩な派生モデルも存在します。
ただし、オリジナルの1989年モデルや本人期のものは非常に希少で、古着市場では高値で取引されています。そのデザインと背景を理解している人にとっては、単なるブーツ以上の意味を持つ存在です。
このように、タビブーツはマルジェラ本人の美意識と哲学が凝縮されたプロダクトであり、本人期を象徴する不朽の名作といえるでしょう。
本人期のリングアイテムとは

マルジェラの「本人期」におけるリングアイテムとは、ジュエリーというカテゴリを越えて、コンセプチュアルな意味合いを持つアクセサリーです。単なる装飾品ではなく、マルジェラの思想や美学をそのまま体現したプロダクトとして注目されています。
とくに有名なのが、2000年代初頭に発表された「ナンバーリング」です。これはマルジェラが用いたラインナンバーを刻印したもので、カレンダータグの数字「11」や「0」などが記されており、ブランド内部のシステムをアイテムとして再構築しています。表面は極めてミニマルですが、その数字がマルジェラの世界観と強く結びついていることから、コレクターの間で高い人気を誇っています。
また、シンプルなプレーンリングであっても、仕上げがラフであったり、刻印があえて不鮮明だったりすることで、マルジェラ特有の「未完成の美」や「匿名性」が表現されています。こうしたデザインは大量生産では再現しづらく、本人期のリングは現在でも希少価値が高いままです。
デザイン自体は控えめで主張しすぎないものが多いのですが、だからこそ服とのコーディネートもしやすく、日常使いにも適しています。ファッションに深く興味がある方ほど、その奥行きのあるコンセプトに魅了されることが多いアイテムです。
アーティザナルの魅力と代表作

マルジェラの中でも特に高く評価されているのが「アーティザナル」ラインです。このラインは1991年から始まり、既製品ではなく一点一点が手作業で製作される特別なアイテム群です。アーティザナルは、ブランドのなかで最も思想的で実験的なラインとして知られています。
魅力の一つは、ヴィンテージ素材を解体・再構築して新しい作品を作り出すという独自のプロセスにあります。単に古着を使っているのではなく、それぞれのパーツが持つ記憶や歴史を再解釈し、新たな意味を加える行為こそが、マルジェラらしいクリエイションです。
代表作には、複数のレザーベルトを繋ぎ合わせて作られた「レザーベルトベスト」、解体したパイロットキャップから作られたジャケット、さらにはミリタリーソックスを編み直して仕立てたニットなどがあります。いずれも常識を超えたアイデアが詰まっており、アートピースとして展示されることも珍しくありません。
ただし、手作業ゆえに生産数が極めて少なく、価格も高めです。購入には相応の知識とタイミングが求められるため、一般的なファッションアイテムとは一線を画します。それでも世界中のコレクターがこのラインに熱い視線を送り続けているのは、アーティザナルにしかない価値が存在するからです。
本人期のアイテムが高騰する理由とは

マルジェラ本人期のアイテムが古着市場で高騰しているのは、単に「希少だから」という理由だけではありません。その背景には、デザインの独自性とブランドの思想に対する熱狂的な支持があります。
まず、マルジェラ本人がデザインしていた1989年〜2009年のアイテムには、現在のファッションではあまり見られない尖った美学が反映されています。インサイドアウト、脱構築、再構築といった独自の手法が、他ブランドとは一線を画す存在感を放っています。そのため、ファッションの歴史を学ぶうえでも重要な資料的価値があるのです。
次に、本人期のアイテムは大量生産ではなく、小ロットで丁寧に作られていたものが多く、そもそもの流通数が少ないという現実もあります。とくに「MISS DEANNA」タグや「ここのえ期」のアイテムなどは、代理店や製造背景が限定されているため、国内外のコレクターから常に需要があります。
さらに、本人期の人気上昇に拍車をかけているのが、現在のブランド展開との違いです。ジョン・ガリアーノ体制以降、より商業的・ポップな方向へと変化したことで、原点回帰を望むファンが本人期のアーカイブを求める傾向が強まりました。
このように、過去のプロダクトでありながら、現在のファッションに対する問題提起としても意味を持ち続けている本人期のアイテムは、今後も高い評価と価格を維持していくと考えられます。
マルジェラ 本人期の名作とその影響

本人期の名作アイテム

マルジェラの本人期には、後世に多大な影響を与えた名作アイテムが数多く生み出されました。その中でも特に有名なものが「タビブーツ」「エイズTシャツ」「ハの字ライダース」「エルボーパッチニット」などです。
タビブーツは1989年のデビューコレクションで登場し、現在までブランドの象徴的アイテムとして継続されています。日本の地下足袋からインスピレーションを得た形状は、当時の欧米ファッションに強烈なインパクトを与えました。
一方、エイズTシャツは社会問題への関心をファッションで表現したユニークな試みです。シンプルな見た目ながら、メッセージ性が非常に強く、売上の一部は実際にエイズ支援団体へ寄付されています。
その他、肩から腰にかけて斜めに走るジップが特徴の「ハの字ライダース」や、古着的要素と実用性を融合させた「エルボーパッチニット」なども高く評価されています。これらのアイテムに共通しているのは、ファッションとしてのデザイン性だけでなく、強いコンセプトと再構築の手法が反映されていることです。
これら名作は、マルジェラが単なる衣服デザイナーではなく、思想や価値観をプロダクトに落とし込むアーティスト的存在であったことを物語っています。
コレクションの歴史を振り返る

マルジェラのコレクションは、1989年春夏からスタートし、常に革新的なテーマで業界を驚かせ続けてきました。本人期だけでも20年にわたる豊かな創作の歴史があります。
1989年春夏は、だまし絵(トロンプルイユ)をモチーフとしたボディースーツなどが話題を呼び、ブランドの方向性を示す象徴的なスタートとなりました。1994年秋冬には人形の服を拡大して再構築した「ドールコレクション」、1998年春夏には平面の服を実験した「フラットガーメント」など、発想の幅広さが際立っています。
また、1999年秋冬には布団をコートにした「デュベットコート」が登場し、実用品とファッションの境界を曖昧にするユニークな作品として注目されました。
これらの流れの中で、アーティザナルラインやレプリカシリーズといった派生ラインも生まれ、マルジェラの世界観をさらに拡張しています。これを時系列で見ることで、単なるトレンドの変遷ではなく、1つの思想が進化していくプロセスが浮き彫りになります。
本人期のコレクションは、どのシーズンをとっても新たな挑戦と問いかけに満ちており、その歴史全体がブランドの核そのものだと言えるでしょう。
本人期とここのえ期の関係

「ここのえ期」とは、マルジェラの日本市場における流通を担った代理店「ここのえ株式会社」が関与していた時期を指します。2000年頃から2010年前後までの間に該当し、ちょうどマルジェラ本人期と一部重なっています。
ここで注意したいのは、「本人期」と「ここのえ期」が同じ意味ではないという点です。本人期はあくまでマルタン・マルジェラ本人がデザインを手がけていた1989年〜2009年春夏までの時期を指します。一方、ここのえ期は流通や販売体制の区切りを示すもので、デザイナーの関与とは別の話です。
しかし、ここのえ期のアイテムには本人期の名作が多く含まれており、そのため市場では「ここのえタグがある=本人期の可能性が高い」という判断材料として使われることがあります。特に、タグに「COMM.」と書かれた表記や、「ここのえ株式会社」の名前が入っているかどうかで、おおよその年代を判別することが可能です。
一方で、2009年以降もここのえは引き続き販売を担当していたため、ここのえタグが付いているからといって必ずしも本人期とは限りません。購入や査定時には、タグの表記だけでなく、品番の数字やデザインの特徴もしっかり確認することが求められます。
本人退任後のデザインチーム期

マルタン・マルジェラがブランドを離れた2009年春夏以降、デザインチームによる体制が約6年間続きました。この期間を一般的に「デザインチーム期」と呼びます。特定のクリエイティブディレクターを立てず、マルジェラのアトリエに所属していたメンバーたちがチームでデザインを引き継ぐかたちでした。
この方式の特徴は、マルジェラ本人が築き上げたデザインコードを継承しつつも、ややトーンを抑えたコレクションが多かったことです。例えば、インサイドアウトや脱構築といった手法は残されていましたが、本人期のような強烈な実験性や社会的メッセージ性は影をひそめました。むしろ、既存のアーカイブをベースにした再構成や、ブランドの定番を安定的に展開する方向へとシフトしていきます。
この時期の評価は分かれるところですが、過度な商業化に走らず、ブランドのアイデンティティを丁寧に守ったという見方もできます。実際、マニアの中にはデザインチーム期を「静かな継承」として肯定的にとらえる声も存在します。
ただし、ガリアーノが就任した2015年秋冬からは、ブランドに明確な個性が再注入されるようになります。このことからも、デザインチーム期は、本人の不在を埋める“つなぎ”ではなく、マルジェラの遺産を再解釈する重要な移行期間であったと捉えるべきでしょう。
内タグ 本物の見分け方と注意点

マルジェラのアイテムを購入する際、正規品かどうかを見分ける手がかりのひとつが「内タグ」の確認です。特に本人期のアーカイブを探す際には、内タグの仕様や印字情報が年代判別や真贋の判断において重要な役割を果たします。
まず注目すべきは、タグに記載されている「代理店名」や「COMM.ナンバー」です。たとえば「ここのえ株式会社」「KOKONOE CO., LTD.」などの表記は、本人期に該当する時期と重なっており、その信頼性が比較的高いとされています。さらに、COMMの後ろにある3桁~6桁の数字(例:/004 など)から、シーズンや年式を割り出すことが可能です。
もう一つのポイントは、タグの縫い方や素材感です。本物のタグは丁寧に縫い付けられており、紙質や糸の質にも明確な違いが見られます。特に4本の白いステッチがタグの四隅に施されているかどうかは、マルジェラらしさを象徴するディテールとして注視すべき点です。ただし、アイテムによってはステッチが省略されていることもあるため、それだけで判断するのは避けましょう。
一方で注意すべきは、タグだけを見て本物と判断してしまうリスクです。現在ではタグ自体が偽造されているケースもあるため、信頼できる販売店や専門の鑑定サービスを利用するのが安全です。また、タグ情報だけでなく、縫製の細かさ、素材の風合い、過去のカタログとの照合といった多角的な視点が必要になります。
内タグはあくまで参考情報の一つに過ぎませんが、それでも正しい知識を持って見ることで、本物との出会いに大きく近づくことができるのは確かです。
マルジェラ 本人期の特徴と価値を総まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- 本人期は1989年春夏から2009年春夏までの約20年間
- マルタン・マルジェラ本人がデザインを手がけていた期間
- デザイン哲学は脱構築と再構築に基づいている
- 縫い目や裏地をあえて見せる「インサイドアウト」を多用
- 顔を見せない匿名性とメディアへの非露出を徹底
- ブランドの象徴として「タビブーツ」が登場
- 本人期のリングはナンバー刻印など思想的要素が強い
- 「アーティザナル」は手作業による一点物の実験的ライン
- 本人期アイテムは現在の古着市場で高騰している
- タグに「ここのえ株式会社」とあるものが多い
- 「MISS DEANNA」など特定のタグは価値の目印とされる
- 代表作には「エイズTシャツ」「ハの字ライダース」などがある
- コレクションは毎回テーマ性が強くアート性が高い
- 本人退任後はデザインチームが思想を継承する形を取った
- 内タグの記載や縫製で本物かどうかを見分けることが可能